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Culture  Hour

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NHKカルチャーアワー

科学と視線「アンチエイジングの科学」

順天堂大学教授 白澤卓二
  聞き書き 田 村 銕 也

第1回「年をとるとはどういうことか」

 アンチエイジングを科学するということで、人が何歳ぐらいまで生きられるかという寿命の話から入っていきたい。

  寿命といっても、3つの寿命がある。

1 平均寿命 年1回厚生労働省が発表しマスコミが報道しているもの。日本人の女性の平均寿命が85歳、男性は79歳。

2 最大寿命 人間が最大何歳まで生きられるか。人間は何歳ぐらいまで生きられる動物なのかの答えがこれである。

3 健康寿命 WHOが平均寿命だけではなく、健康でいられる期間はどれぐらいあるのかを計算しなさいというもの。平均寿命から平均療養日数、いわば最後に病院通いをした年数を引いたものが健康寿命となる。女性の場合平均寿命の85年間元気でいられるわけではない。実は平均的には最後の9年間ぐらいは病院通いをする。そうすると85−9の76年間が病院通いせずに元気に生活できる寿命、健康寿命ということができる。

122歳まで生きた女性

 2の「最大寿命」、人間が何歳まで生きられるかという話題から入っていく。

 人間を実験するわけにいかないので、今までの長生きしたひとの記録をもって、これくらいまで生きられるものとしている。

 フランス人のカルマンさんという女性は1875年にフランスのアベルという町で生まれ、1997年に122歳で亡くなった。120歳のときの誕生日の写真がネイチャーという写真総合誌の表紙を飾った。ほとんど白髪でたぶん白内障もあったと思われる。120歳の誕生日に世界中からマスコミが集まってインタビューをした。食事の風景を見るとよく噛んでいて咀嚼力がいいということがわかる。気候が温暖な町で生まれ育って、ここのナーシングホームで亡くなった。両親も長生きしたから長寿の家系に生まれてきた。これだけ聴くと長寿の家系で長生きしたとなると、これは長寿遺伝子があってカルマンさんは長寿遺伝子を持っていたと考えるかもしれないが、実はそうではない。

 カルマンさんの若い頃の写真などのデータが残っている。イボンヌという娘がいて、娘20歳代後半、カルマンさん40歳代後半の写真。カルマンさんは40歳で相当アンチエイジングしていた。写真だけ見ると20歳ぐらい若い感じである。

 もっと凄いエピソードがある。85際でフェンシングを始めたのだ。

 こう考えてみよう。彼女が40歳アンチエイジングしていたと仮定しても45歳でフェンシングを始めたということになり、オリンピックでフェンシングを見たが、細い剣でお互いをつつきあうスポーツだから、まず老眼鏡が必要だとかのひとはこれをやろうとは思わない。85歳でフェンシングをやろうと考えたことはかなり細かいものを見るとか目で追うとかそれをよけるとか、若者と同じようにたぶんできたんだろうな、ということがこのエピソードから分かる。今でいえばはげしくアンチエイジングしていたおばさんだった。百歳で自転車乗り回していたという話なので、すべてのエピソードで相当アンチエイジングしていたと分かる。

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