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Culture  Hour

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NHKカルチャーアワー
科学と視線「アンチエイジングの科学」

順天堂大学教授 白澤卓二
  聞き書き 田 村 銕 也

第12回「チャレンジ精神の大切さ」(最終回)

チャレンジ精神の大切さ、食事と運動と違って心の持ち方というのはマニュアル化できない。そこで「こういう人はこういう生き方をしている」と紹介することにし、ご自分と比べて目標設定の参考にしてほしい。

 

<カルマンさん>

 世界でもっとも長生きしたフランス人のカルマンさんの話を第一回で紹介した。彼女は後期印象派画家のゴッホと交友があった。アルルの町で画材屋でアルバイトをしていた。120歳の誕生日にインタビューをしたときの当意即妙の受け答えをしている(第一回に詳しいので省略)。

 彼女の話し言葉には関係代名詞が入っている。英語ではWhichだ。アルツハイマー病になるとほとんど関係代名詞を使わなくなる。関係代名詞は修飾している主語があって、それを覚えていて動詞がくるから、この部分がメモリに記憶できないと話せない。だからこういうしつこい構文は使いたがらない。

 ところがカルマンさんの言葉には関係代名詞がたくさん出てくる。関係代名詞が出てくると複雑で論理的な構文が出来上がる。「勇気があるからどんなことも恐れない」。原因と結果が論理的に構成されている。「うまくいったときは嬉しかった、正しいことのために行動したことに後悔はない、だから私は本当に幸運だった」。言っている内容がストレートフォワードなロジックでビシッと固まっている。単に「嬉しかった」「楽しかった」ではなく、その理由を述べている。これはかなり頭がしっかりしている。

 

<百寿者の国、日本・韓国>

 人間の脳の細胞は120歳まで生きても若い人と同じようにかなり働ける。この傾向はフランス人だけではない。だいぶん以前になるが、タイムマガジンが「どうしてこんなに長寿が極東で流行ってるのか」という特集を組んだことがある。極東とは日本と韓国を指していて、百寿者(百歳以上の人口)が爆発的に増えているというのだ。日本と韓国に見られる現象で他の地域ではそうでもない。「長寿が極東で流行っている」という表現だ。

 

<有馬秀子さん>

 このときの日本の代表選手は、有馬秀子さんという戦後の銀座を支えていたママさんだった。百歳になった彼女曰く、豊かな人生を送るためには「人との出会いが重要だ」という。「出会いを仕事にしてきた私は幸せだった」という言葉はカルマンさんと同じロジックだ。インタビューに対しては、前向きで後ろ向きのことは言わないのが百寿の人の特徴だ。

 

 
 

 

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