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Culture  Hour

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NHKカルチャーアワー

科学と視線「アンチエイジングの科学」

順天堂大学教授 白澤卓二
  聞き書き 田 村 銕 也

第4回「植物の抗酸化作用とは」

ヒトケミカル 

 前回の「長寿遺伝子をONにする」で、葡萄,ピーナツ,玉葱の皮に有効成分があると話した。キーワードは皮だと。「レスベラトロール」というポリフェノールが葡萄の皮にあった。  「ヒトケミカル」というギリシャ語の言葉がある。「ヒト」とは植物由来。ケミカルは化学物質なので「植物由来の化学物質」という意味だ。

 今日は、長寿遺伝子をONにしていたのは、このヒトケミカルだということと、どういう野菜や果物に含まれていて、どういう作用をしているのかの話をしたい。

  日本茶(緑茶)には苦味があるが、この苦味の成分は「エピガロカテキンガレート」といわれる化学物質だ。構造をみると亀の甲(ベンゼン核)が複数あるものをポリフェノールと呼んでいて、亀の甲が複数ある化学物質の総称である。ウコンに含まれている「クルクミン」もポリフェノールだ。ところがトマトに含まれている「リコピン」はフェノール基がないのでポリフェノールではないが、非常に強い抗酸化作用があってヒトケミカルの代表である。これを「カロテノイド」という構造になっていて、ヒトケミカルの一種である。

 ヒトケミカルには3つの作用がある。

1 抗酸化作用  細胞が酸化するプロセスを防いでくれる。細胞が錆付いたり、DNA         が錆付いたりするのを抑えてくれる。

2 抗炎症作用  風邪を引いたときに起こす炎症など、炎症を抑えてくれる作用がある。         風邪のとき食べると効く食べ物というのは抗炎症作用のある食品だ。

3 がん細胞増殖抑制作用  がん細胞の増殖するスピードを抑えてくれる。

 ヒトケミカルは野菜に含まれている。ブロッコリーにはヒトケミカルが200種類以上も含まれている。ということはひとつの野菜には複数のヒトケミカルがあるということだ。ブドウにはデスペラトロール以外にも他にたくさん有効成分がある。だがそれはまだよく分かっていない。ブロッコリーには「スルフォラファン」というヒトケミカルがあるがそれ以外にもたくさんある。サラダには複数の野菜が入っているから数百種類のヒトケミカルのかたまりを食べていることになる。なるべく多くの種類のヒトケミカルを摂取した方がよい。

 では、どうして植物がヒトケミカルを作っているのか。植物なりの理由があるのだ。

 植物が環境ストレスに対して反応している。敵から逃げることは出来ないので戦わざるをえない。紫外線、虫、土中の黴菌などから逃げられない宿命がある。そういうものに対して自分の身体が強くなっていなければいけない。紫外線から身を守るような化学物質を蓄える、自分を食べる虫が嫌う味を作って体内に蓄える、土中の黴菌を殺してしまうような抗菌作用のある成分を蓄えることによって自分の身を守り、子孫を残していく。

 ストレスに対する反応で体内に対抗物質を作っていることになる。したがってストレスが大きいほどヒトケミカルをたくさん蓄えていることになる。

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