|
P1 |
NHKカルチャーアワー 科学と視線「アンチエイジングの科学」 順天堂大学教授 白澤卓二 |
聞き書き 田 村 銕 也 |
第8回「日常生活を変える」
「メタボリック症候群」は、ドミノのように体の中で変化が徐々に確実に進んでいく。最初の変化が現れてから糖尿病や動脈硬化を発症したりするのに、20〜30年という長い年月がかかる。 ある男性が55歳で心筋梗塞を起こしたら「若くして発症した」と思われるが、その最初の病変は20代後半とか30代前半くらいから始まっていたということだ。ドミノが倒れるように、身体の中で変化が起きていたのだ。最終的に症状が出てきて受診するが、それまでの長い年月に、症状のない病変が進んでいたということだ。 これを予防するためには、食事とか運動とかのライフスタイルが重要だ。中年から高齢期にかけては、常に疾病を予防していくために生活を見直していく必要がある。 ドミノを止める 最初にあるドミノは「肥満」である。食べ過ぎ、運動不足が引き金になっている。これが進むとインスリンの効きが悪くなってきて病気の前進が始まる。年1回の定期検診で、血糖値が高い、血圧が高い、コレステロール値が高いと指摘されたときに、すぐに気が付いてライフスタイルを変えて元に戻せば、そこでドミノを止めることが出来る。糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞の発症をくい止めることが出来る。 では具体的にどうやって生活スタイルを変えたらいいのか。症状がまだ出てない段階で生活を変えるのは難しい。生活習慣改善、運動といっても三日坊主に終わってしまうことが多い。これが問題なのだ。 「フィットネスが良い」と言われて、フィットネスクラブに10年、20年と通い続けられる人はほとんどない。自分からフィットネスクラブへ行っている人は医師に言われなくとも続けて行っている。だから何もしていない人に「フィットネスクラブ行きなさい」と言うだけでは解決しない。 食事についても、「食べすぎない、アルコールやタバコを控えなさい」というのは簡単だ。それでそのとおりできればわけはない。分かっているけれども止められない。ここをいかにしたら良いのかが今日の話題だ。
|